クレームはお店の財産、でも線はある
カスハラ対策の目的は「お客様に苦情を言わせないこと」ではありません。正当な指摘はお店をよくするヒントです。そのうえで、従業員を不当な要求や攻撃から守るために、どこから先は応じないかを決めておく必要があります。
判断の2つの軸
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、要求内容と要求手段・態様の2つの軸から、社会通念上許容される範囲を超えているかを確認する考え方が示されています。
| 軸 | 考えること | 行き過ぎの例 |
|---|---|---|
| 要求内容 | 求めている内容に妥当性はあるか。お店側に落ち度はあるか | 落ち度がないのに返金を求める/原因と釣り合わない過大な補償を求める |
| 手段・態様 | 求め方が社会通念に照らして相当か | 暴言・人格否定、威嚇、長時間の拘束、何度も電話、土下座や念書の強要、SNSでの晒しをほのめかす |
4つのパターンで考える
| 求め方は普通 | 求め方が行き過ぎ | |
|---|---|---|
| 要求が正当 | 正当なクレーム 例:料理に髪の毛が入っていたので作り直してほしい | カスハラになり得る 例:作り直しは当然として、怒鳴り続けて土下座を求める |
| 要求が過大 | お断りしてよい要求 例:閉店後に入れてほしい、と丁寧に頼まれる | カスハラ 例:「入れないならSNSに書くぞ」と脅して入店を迫る |
左上だけがお店として全面的に応じるべきケースです。右上は「要求には応じる、でも求め方は改めてもらう」、左下は「丁寧にお断りする」が基本の対応になります。
業種別のよくある場面
飲食店
注文と違う料理が出た → 作り直しは正当。それを理由に「今後ずっと無料にしろ」と要求し続けるのは過大な要求です。
美容室・サロン
仕上がりがイメージと違う → お直しの相談は正当。「全額返金しないなら店名を晒す」と脅すのは手段が不相当です。
介護・福祉
サービスの質についての指摘 → もっともな意見として受け止める。内容が正しくても、毎日長時間の電話で特定の職員を名指しで怒鳴り続けるのは行き過ぎです。
小売店
不良品の交換 → 正当。購入の確認ができないのに返金を強く迫る、レジ前で長時間言いがかりを続けるのは過大・不相当です。
迷ったときの3つの質問
- お店に落ち度はあったか?あったなら、何をすれば見合っているか?
- その求め方を、ほかのお客様の前で他人にされたらどう感じるか?
- このまま続くと、従業員が働き続けられるか?
判断に迷う場面ほど、一人で抱えず責任者が対応を引き継ぐことが大切です。
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参考にした公的資料
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
- 厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(リーフレット詳細版)
※この記事は公的資料をもとにした一般的な解説で、法的助言ではありません。個別の事案や就業規則への反映は、社会保険労務士・弁護士等にご相談ください。内容は更新日時点の情報です。